“人生はニアミスだらけ”
典型的ないい人・宮田をはがゆく思っていた私立探偵の神田は、いつまでも前の彼女のことを引きずっている宮田のために、レストランで1人で寂しそうに食事をしている女性をナンパするが…。
内田けんじ監督の才気が光る本作の真髄は、精巧なパズルのように組み上げられた構造にあります。視点が切り替わるたびに伏線が鮮やかに回収され、見慣れた景色が劇的に変貌していく構成の妙は、まさに映像マジック。観客は作り手の掌の上で転がされる快感に酔いしれ、全てのピースが完璧に嵌まる瞬間の圧倒的なカタルシスを味わうことになります。 お人好しな主人公を演じる中村靖日ら、キャスト陣による絶妙なアンサンブルも白眉です。何気ない偶然の重なりが運命を形作っていく様を軽妙に描く視座は、ままならない人生を肯定する温かな希望に満ちています。脚本の緻密さと映画的な躍動感が幸福に融合した、日本映画史に刻まれるべきエンターテインメントの傑作です。
監督: 内田けんじ
脚本: 内田けんじ
制作会社: Nikkatsu Corporation / IMAGICA / PIA Corporation / Tokyo FM