ニーチェやリルケを虜にした実在の女性、ルー・サロメ。本作はその生涯を、単なる伝記に留めず思考の自由を希求する魂の格闘劇として描き出しています。主演のカタリナ・ローレンツが放つ知性と情熱が同居した眼差しは圧巻であり、既存の道徳や愛の形に屈しない彼女の峻烈な生き様は、現代を生きる私たちの胸を激しく揺さぶります。
特筆すべきは、歴史の激動と精神世界を交差させる流麗な映像美です。回想形式の演出は、一人の女性が自分自身であり続けるために払った代償と、その先に掴んだ孤高の輝きを際立たせています。魔性の女という枠組みを排し、真理を追い求めた一人の哲学者としての気概に触れるとき、観る者は真の自立とは何かを深く突きつけられるはずです。