喪失という底なしの闇を視覚的に捉え直した、極めて純度の高い衝撃作です。文明を捨て穴ぐらで暮らす夫婦の姿は、悲しみに飲み込まれた人間が辿り着く究極の聖域であり、同時に残酷な牢獄でもあります。剥き出しの自然の中で展開される息の詰まるような沈黙と、原始的なサバイバル描写が、観る者の倫理観と本能を激しく揺さぶり、深い余韻を残します。
ポール・ヒギンズとケイト・ディッキーの鬼気迫る演技は圧巻の一言に尽きます。再生を願う夫と、悲しみに同化しようとする妻の感情のズレが、静謐な映像美の中でスリリングに描き出されています。文明の境界線で足掻く二人の姿は、愛という名の執着と狂気を浮き彫りにし、人間という存在の本質を鋭く問いかけてくる名品です。