この作品の真髄は、汚濁にまみれた政治的陰謀と、一匹の犬が体現する究極の純粋性が鮮烈に衝突するダイナミズムにあります。鶴田浩二が放つ圧倒的な風格と地井武男の熱演が人間社会の業を浮き彫りにする一方で、黙々と走り続ける犬の姿が、言葉を超えた気高い魂の輝きを放っています。
西村寿行の原作を大胆に映像化した本作は、広大な風景の中を疾走する生命の躍動を視覚的に刻み込みました。活字の想像力を超える野性味溢れる演出と、島田陽子が醸し出す繊細な叙情の対比が、冷徹な追跡劇の中に熱い人間讃歌をもたらしており、観る者の魂を激しく揺さぶる一級の傑作へと昇華されています。