名優クルト・ボワの円熟味が光る本作は、滑稽さと哀愁が同居する傑作コメディです。死という重厚なテーマを、ニシンの前菜という日常の断片へと昇華させる軽妙な演出は見事の一言。人生の黄昏時にある人間たちが織りなす皮肉交じりの会話劇は、観る者の心に深い余韻を残し、生の本質を鋭く突きつけます。
キャスト陣のアンサンブルは、映像ならではの沈黙の間を活かし、言葉以上の感情を雄弁に物語っています。日常の何気ない瞬間にこそ愛と死が潜んでいるという普遍的な真理が洗練された筆致で描かれており、鑑賞後は人生の不条理さえも愛おしく感じられる至福のひとときを約束してくれます。