五所平之助監督の才気が光る本作は、トーキー初期の瑞々しい魅力が凝縮された喜劇の傑作です。最大の鍵は、若き日の田中絹代が見せる圧倒的な可憐さと、斎藤達雄との軽妙な掛け合いにあります。日常の何気ない寝言を軸に、新婚夫婦の親密さと滑稽さを描く演出は、時代を超えて観客の心を弾ませる幸福感に満ちています。
音響を巧みに操る構成は、映画が言葉を得た時代の喜びを体現しており、名脇役たちが添えるユーモアが物語に豊かな彩りを与えています。戦前のモダンな空気感の中で、人間の愛らしさを肯定する温かな眼差し。それこそが、今なお色褪せない本作の本質的な輝きなのです。