本作の最大の魅力は、主演のカトリーヌ・ジャコブが体現する、滑稽さと切なさが同居した圧倒的な人間臭さにあります。フランス流のエスプリが効いた会話劇の裏側に、愛を渇望する人々の切実さが、鮮やかな色彩と軽妙なテンポで描かれています。単なるコメディの枠を超え、観る者の心に潜む孤独や情熱を、鏡のように映し出す演出は実に見事です。
特に注目すべきは、言葉にならない感情の機微を捉えた実力派俳優たちの表情の応酬です。愛という不確かなものに翻弄される人間の愛おしさを、エチエンヌ・シコらが絶妙なアンサンブルで浮き彫りにします。人生の複雑さを笑い飛ばしながらも、ふとした瞬間に胸を打つ抒情性が宿る本作は、まさに大人のための芳醇な一作と言えるでしょう。