ルチアーノ・パヴァロッティという不世出のテノールが、苦悩する王の魂を震えるような歌声で体現しており、その圧倒的な声の輝きが作品の中核をなしています。神への誓いと愛する息子への情愛の間で引き裂かれる内面が、クローズアップを多用した映像美によって、舞台上以上に克明に、そして生々しく描き出されている点が本作の白眉です。
モーツァルトの原曲が持つ古典的な様式美に、ヒルデガルト・ベーレンスらの鬼気迫る演技が融合し、単なる音楽劇を超えた心理サスペンスのような緊張感を生んでいます。舞台では捉えきれない繊細な表情の変化が、運命に抗う人間の孤独を浮き彫りにし、観る者の心に激しいカタルシスを呼び起こす究極の芸術体験となるはずです。