青山真治監督が描く本作は、視覚を失った男と彼を支える女の、言葉を超えた魂の共鳴を映し出す傑作です。鈴木京香の静謐ながらも溢れ出す情念と、山崎努の圧倒的な存在感が、閉ざされた空間に濃密なエロティシズムと緊張感をもたらしています。沈黙の中に響く虫の音や光の移ろいが、人間の孤独と救済を鮮烈に描き出しており、観る者の五感を激しく揺さぶります。
阿部和重の原作小説が持つ冷徹な文体に対し、映像化された本作は、肌の質感や呼吸のゆらぎといった実体感を伴う表現で、物語に血肉を通わせました。活字では捉えきれない、沈黙の合間に漂う暴力的なまでの美しさは、映画という媒体だからこそ到達できた境地です。観る者は、ただそこに在ることの重みを、峻烈な映像体験として突きつけられるでしょう。