伝説的な名優イグナシオ・ロペス・タルソが、メキシコ壁画運動の巨匠オロスコの魂を驚異的な熱量で体現しています。単なる伝記映画の枠を超え、異国の地で自身の表現の場である「壁」を追い求める芸術家の孤独と渇望が、抑制の効いた演出の中で静かに、しかし力強く炸裂しています。
本作の真髄は、芸術が政治や社会と交差する瞬間の火花を描き切った点にあります。冷淡なニューヨークの街並みと対照的に、魂の奥底で燃え盛る情熱を捉えた映像美は圧巻です。自らのアイデンティティを賭けて不条理な現実に立ち向かうその姿は、時代を超えて表現の本質とは何かを我々に問いかけてきます。