本作が描き出すのは、稀代のスターであるフランク・シナトラの単なる栄光ではない。ステージで見せる完璧な「神話」と、その裏に潜む一人の人間としての渇望や孤独、その二面性を鋭くえぐる視座こそが最大の魅力だ。洗練された映像が映し出すのは一時代の文化そのものとなった男の凄みであり、彼が背負った時代の重圧が生々しく伝わってくる。
トミー・ラソーダら各界の重鎮が語る言葉は、シナトラという存在がいかに多層的であったかを浮き彫りにする。富と名声の頂点に立ちながら、なおも魂の自由を求めた生き様は、見る者に真のカリスマの条件を問いかける。歌声の裏に隠された情熱と挫折のコントラストが、観る者の心を震わせる至高のドキュメンタリーだ。