この作品の真髄は、閉鎖的な車内で繰り広げられる無責任さと道徳的崩壊の生々しい描写にあります。破滅へと向かう緊迫感は観る者の倫理観を激しく揺さぶり、ダーモット・ウォルシュが見せる傲慢さと脆さが同居した演技は、人間の内面に潜む醜悪さを冷徹に炙り出します。観客を一気に物語の深淵へと引きずり込むその筆致は実に見事です。
テレンス・フィッシャーの演出は、夜の闇と共に良心が削り取られる過程を鋭いリアリズムで描きました。本作は、時代を超えて「公衆への危険」とは何かを厳格に問いかけます。単なる教訓劇に留まらない、人間の本質を突く重厚な心理サスペンスとして、今なお色褪せない衝撃を放つ必見の傑作といえるでしょう。