この作品の真髄は、異国の地で揺れ動くアイデンティティの葛藤を、剥き出しのリアリズムで描き切った点にあります。戦火に焼かれる祖国の惨状が、遠く離れた地に住む者たちの日常に暗い影を落とし、かつての親密な絆を無慈悲に引き裂いていく過程は、言葉を失うほどに痛切です。
アレクサンダル・ヨヴァノヴィッチらが見せる、魂を削るような熱演は必見です。静かな狂気と深い哀愁が混ざり合う演技は、国や民族とは何かという根源的な問いを我々に突きつけます。個人の力では抗えない歴史の奔流を、圧倒的な熱量でフィルムに定着させた、魂を揺さぶる傑作といえるでしょう。