大映が誇る端正な映像美と、底冷えするような人間の業が交錯する傑作です。船越英二の繊細かつ狂気を孕んだ演技が、愛憎の泥沼に沈みゆく男の苦悩を凄絶に体現しており、観る者の心象を激しく揺さぶります。単なる恐怖演出を超えた、静謐ながらも息苦しいほどの緊張感が作品全体を支配しています。
本作の真髄は、視覚的な驚き以上に「音」と「影」の巧みな演出にあります。蚊帳越しに忍び寄る不穏な気配や、暗闇から浮き上がる情念の象徴が、日本的な情緒を伴って美しくも恐ろしく描き出されています。因果応報の理を突きつけながら、人間の執念が持つ深淵なエネルギーを映像の力で昇華させた、まさに怪談映画の極致といえるでしょう。