美大で芸術を学んだトニー(イッセー尾形)は、デザイン会社へ就職、その後独立してイラストレーターになり、自宅のアトリエで仕事をこなすようになる。そんなトニーが一人の女性、出版社編集部員・小沼英子(宮沢りえ)に恋をする。
市川準監督によるこの映像詩は、静謐なカメラワークと横移動のカットが織りなす、動く絵巻物のような美しさが最大の魅力です。無駄を削ぎ落としたミニマリズムの中に、圧倒的な孤独の気配が漂っています。イッセー尾形と宮沢りえの繊細な演技は、欠落を埋めようとする人間の切なさを体現し、観る者の心に深い余韻を残します。 坂本龍一のピアノが淡い光と共鳴し、喪失感という空虚を美しく描き出しています。西島秀俊の淡々とした語りは、孤独の本質を鋭く突き刺します。服という抜け殻が象徴する不在の存在感を通じて、個のアイデンティティを問いかける本作は、静かな画面から溢れ出す剥き出しの感情に心が震える傑作です。
監督: 市川準
脚本: 市川準 / 村上春樹
音楽: 坂本龍一
制作: 米澤桂子
撮影監督: 広川泰士
制作会社: Breath / Wilco Co.