時代劇の父、伊藤大輔監督と萬屋錦之介が魂をぶつけ合った本作は、若き悲劇の武将、徳川信康の葛藤を極限まで描き切った白熱の人間ドラマです。錦之介が見せる鬼気迫る情念と、美しくも残酷な運命に翻弄される姿は、観る者の胸を貫く凄絶な美しさを放っており、一瞬たりとも目が離せません。
鷲尾三郎の原作が持つ冷徹な史実の枠組みを、映画ならではの鮮烈な色彩と様式美で見事に昇華させています。権力という巨大な濁流の中で、親子や夫婦の情愛がいかに無力で、同時にいかに尊いものであるかを問いかける本作のメッセージは、時代を超えて現代人の心に鋭く突き刺さることでしょう。