本作の真髄は、ジョーン・グリーンウッドが体現する「沈黙」の圧倒的な雄弁さにあります。言葉を封印した演技でありながら、彼女の瞳と優雅な身のこなしが放つコメディエンヌとしての煌めきは、観客を瞬時に虜にします。ヒュー・ウィリアムズ演じる皮肉屋な独身主義者の困惑と、彼を翻弄する静寂の対比は、洗練されたブリティッシュ・ユーモアの極致と言えるでしょう。
洗練された演出の裏側に潜むのは、人間関係における「真の理解」とは何かを問う鋭い眼差しです。喧騒の中でこそ輝く静けさの価値、そして言葉を介さずとも心を通わせる瞬間の美しさが、軽妙なタッチで描き出されます。バジル・ラドフォードら名脇役たちが添える絶妙な間合いも相まって、全編に漂う知的な愉悦が、観る者の心を温かく満たしてくれる至高の喜劇です。