マザー・グースの詩を土台とした本作は、繰り返されるリズムと連鎖するイメージが織りなす「増殖の美学」が最大の見どころです。ソ連を代表する名優イーゴリ・イリインスキーの語りは、言葉の響きそのものを音楽へと昇華させ、観る者を中毒的な心地よさへと誘います。画面いっぱいに広がる線画の躍動感は、静止した絵画には決して真似できないアニメーション独自の生命力に満ち溢れています。
原作であるサミュイル・マルシャークの翻訳詩は、積み上げの構造が魅力ですが、映像化によってその空間性はより重層的なものとなりました。言葉が次々と実体を伴って現れ、それらが重なり合って一つの「家」を形作っていく過程は、映像メディアだからこそ成し得た構築の魔法です。単純な反復の中に、世界のカオスと秩序が凝縮された、まさに映像詩の傑作と言えるでしょう。