トルコ映画の黄金期を象徴する本作は、アイハン・ウシュクの圧倒的なカリスマ性とフィリス・アクンの清楚な美しさが火花を散らす、至高の人間ドラマです。華やかな美容室を舞台に、男女の機微を鮮やかに切り取る演出は、単なる娯楽の枠を超えた芸術性を放っています。特に、絵画のように完璧な構図が、登場人物たちの抑制された情熱を雄弁に物語っており、全編が視覚的な悦びに満ちています。
喜劇王エズテュルク・セレンギルの軽妙なスパイスが、重層的なドラマに絶妙なリズムを与えている点も見逃せません。洗練された都会的な情緒の裏側に、普遍的な愛と自己のアイデンティティを模索する深いメッセージが込められています。時代の風を捉えながらも、決して色褪せることのない人間讃歌として、観る者の心に温かな余韻を残す珠玉の傑作といえるでしょう。