本作の核は、心臓移植の裏に潜む「記憶」の呪縛と救済です。ジョシュ・ルーカスが体現する、肉体が他者の意志で変質していくことへの困惑と身体的リアリズムが、静謐ながらも息苦しい緊張感を生み出しています。単なるスリラーを超え、肉体と魂の境界線に鋭く切り込む演出は、観客の倫理観を激しく揺さぶります。
心臓の鼓動が作品のテンポとなり、謎が深まるにつれて観客の心拍数をも操る没入感が秀逸です。ブライアン・コックスら名優の重厚な演技が物語に深みを与え、運命という不可避な力に翻弄される人間の脆さを浮き彫りにします。生命の執念を冷徹かつ美しく描き出した、五感を刺激する一作です。