成瀬巳喜男監督が描く本作の真髄は、加害者と被害者の間に横たわる階層社会の断絶と、母親の執念の凄まじさにあります。高峰秀子が見せる悲しみの果てに宿る冷徹な眼差しは、観る者の心臓を鷲掴みにするほどの迫力に満ちており、人間の奥底に眠る業を鋭く突きつけます。
静謐な演出の中に刻まれた人間のエゴイズムと、音のない叫びに圧倒されます。善悪の境界線が揺らぎ、復讐という名の救済がどこへ向かうのか。司葉子の凛とした美しさとその裏に潜む影の対比も見事であり、今なお色褪せない日本映画界の至宝といえる心理サスペンスの傑作です。