あらすじ
味の素のCMで息の合ったところを見せた田中麗奈と樹木希林を主演に、林真理子の短編小説「一年ののち」を市川準が描いた、一年限りの恋物語。つきあっていた彼と別れたばかりのエリコは気分転換にと転職しては見たものの、その退屈な日々は以前とあまり変わらなかった。そんなある日、エリートサラリーマンとの合コンに出かけたエリコは不思議な雰囲気を漂わすタムラという男に興味を持つようになる。数日後、エリコからのデートの誘いに快く応じたタムラだったが、タムラはデートの最中にアメリカに留学中の恋人がいることを告白する……。
作品考察・見どころ
市川準監督の卓越した映像美学が、都会の片隅で揺れる若者の孤独を鮮やかに掬い上げています。主演の田中麗奈が放つ無垢な危うさと、樹木希林ら名優たちの抑制された演技は、言葉にならない胸の疼きを観る者に深く刻みます。日常をドラマチックに塗り替える光の演出は、今なお色褪せない輝きを放っています。
吉本ばななの原作が持つ透明な世界を映像で見事に昇華させた本作は、目に見えない感情の揺らぎを空気感として描き出しています。文字では到達し得ない都会の静寂を体感させる手法は、孤独を抱えながらも誰かと繋がりたいと願う魂に、強烈な共鳴を呼び起こす傑作です。