フィリス・カルヴァートが見せる、冷徹さと情熱が同居した圧倒的な演技こそが本作の白眉です。裏切りを糧に野心を燃やす主人公の変遷を、彼女は単なる復讐劇に留めず、人間の業を体現する深みのある人間ドラマへと昇華させました。マイケル・レニーら実力派キャストとの火花散るような心理戦は、観る者の心を掴んで離さない緊張感に満ちています。
J・S・フレッチャーによる原作小説の緻密な構成を活かしつつ、映像化によって「視線」や「空気感」というエモーションが加わった点は見事です。文字で綴られた成功への渇望が、銀幕では冷たい美しさを纏った孤独として視覚化され、主題である「金銭がもたらす光と影」をより残酷に、かつ鮮烈に際立たせています。映像表現だからこそ到達できた、魂の乾きを突きつける傑作です。