伝説的人気を誇るシットコムを映画化した本作は、単なる懐古趣味に留まらない、日常の機微を捉えた至高の人間喜劇です。主演のジェラルド・コックスとヨーク・ブライスの阿吽の呼吸が生み出すユーモアは、長年の歳月を経て熟成された芸術そのもの。時代に取り残されようとする者の滑稽さと愛らしさを、これほどまでに人間味豊かに描き出した演技力には圧倒されます。
映像化にあたっては、テレビシリーズの濃密な密室劇としての強みを継承しつつ、七〇年代ロッテルダムの風景を映画ならではのスケールで再構築した点が白眉です。かつて当たり前に存在したささやかな幸福を、時に辛辣に、時に温かく切り取った演出は、変化の激しい現代を生きる我々に「真の豊かさとは何か」を情熱的に問いかけてきます。