本作の真の白眉は、抑圧された日常から解放された女性たちが、異国の情熱的な空気感に当てられ、内面がじわじわと変容していく緻密な心理描写にあります。一見穏やかなイタリアの邸宅という舞台設定が、登場人物たちの理性を狂わせていく装置として機能しており、陽光降り注ぐ風景の裏に潜む不穏な気配が、観る者の視覚と本能を強烈に刺激します。
特にキエロン・ムーアの、底知れない魅力と冷徹さが同居した佇まいは圧巻です。彼の一挙手一投足が、姉妹の平穏を官能と疑惑の渦に叩き落としていくプロセスは、まさに映像美と心理サスペンスの極致と言えるでしょう。欲望がもたらす危うさと、それを拒みきれない人間の性(さが)を浮き彫りにした、深淵な人間ドラマとしての輝きに満ちた一作です。