黒沢清監督が描く本作の真髄は、ジャンルの境界を軽やかに越える映画的躍動にあります。ウラジオストクの退廃的な風景に潜む不穏な空気と、突如牙を剥くアクションの対比は圧巻。既存の価値観が崩壊した世界で、個の執着が生存本能へと変貌する過程を、冷徹かつ美しく切り取っています。
主演の前田敦子が放つ底知れぬ存在感は観客を翻弄し、鈴木亮平との緊迫した対峙が劇を研ぎ澄ませます。人間の多面性と自己の揺らぎを突きつける演出は、まさに黒沢監督の独壇場。最後の一瞬まで予測を許さない、強烈な作家性が刻まれた必見の傑作です。