是枝裕和監督の原点とも言える本作は、冷徹な官僚機構の論理と、そこに翻弄される個人の尊厳を対比させる静かな衝撃作です。映像が捉えるのは、淡々と語られる言葉の裏に潜む巨大な組織の闇と、一人の女性が抱える言葉にならない喪失感。カメラは単なる記録の道具を超え、国家という虚構に実存を奪われた個人の魂の叫びを掬い上げる、痛烈な告発の装置へと変貌を遂げています。
タイトルの「しかし」という逆説に込められた、理不尽な現実への静かなる抵抗が胸を打ちます。効率や経済性を優先して弱者を切り捨てる社会の非情さを、過剰な演出を排して描き出すことで、観る者に当事者性を突きつける構成は圧巻。今なお色褪せないこの問いかけは、現代を生きる私たちの倫理観を激しく揺さぶり、福祉の本質を鋭く抉り出すのです。