本作の真髄は、名優マイケル・レッドグレイヴが体現する「表と裏の顔」の滑稽さと、ロバート・モーレイとの絶妙な掛け合いに凝縮されています。英国紳士の品格を漂わせながらも、法の裏側を軽やかに歩む主人公の二面性は、観る者に正義の定義を笑いと共に問いかけます。洗練された会話劇の中に、社会的な地位や名声が持つ滑稽なほどの脆さが鮮やかに描き出されている点が実に見事です。
単なるコメディの枠を超え、虚飾に満ちた社会を風刺する視点は今なお新鮮な輝きを放っています。ライオネル・ジェフリーズら脇を固める個性派俳優たちの怪演が、物語に重層的な深みを与えているのも見逃せません。法を司る側と背く側、その境界線が曖昧に溶けていく瞬間のカタルシスこそが本作の白眉であり、観客の知的好奇心を激しく揺さぶる至高のエンターテインメントと言えるでしょう。