“もう私の体は切っても血が出ない!”
霧は音をたてて流れる…。女の哀しみは激しい怒りに変わった! 殺人事件の容疑者として逮捕された兄の無実を信じ、高名な弁護士に弁護を依頼する妹。しかし、貧しさゆえに断られた妹は弁護士に復讐を誓う。
モノクロームの映像が描き出す、冷徹な復讐劇としての美しさが本作の真髄です。持たざる者が権威という巨大な壁に挑む際の、絶望と紙一重の情熱が全編を支配しています。静謐な緊張感の中に潜む人間の業と、一度狂えば戻れない運命の残酷さが、観る者の倫理観を激しく揺さぶります。 清楚な面差しが憎悪で氷のように変貌する倍賞千恵子の演技は圧巻です。対する滝沢修の、知性と保身の狭間で揺れる重厚な佇まいが、作品のコントラストを鮮明に引き立てます。個人の感情が社会の不条理に絡め取られていく恐怖を、映像の力のみで描ききった魂を震わせる名作です。
監督: 山田洋次
脚本: 松本清張 / 橋本忍
音楽: 林光
制作: 脇田茂
撮影監督: 高羽哲夫
制作会社: Shochiku