神代辰巳監督が描く情調は、単なる懐古に留まりません。画面を支配する湿り気を帯びた空気感と、刹那的な生を謳歌する男女の熱情が、観る者の皮膚感覚を刺激します。長回しで切り取られた、崩れ落ちそうなほど美しい一瞬の静寂。映像でしか捉えられない「時代の匂い」が、全編を通して官能的に立ち上がってきます。
高橋洋子の儚げで芯の強い佇まいは、夏八木勲らの野性味あふれる演技とぶつかり合い、愛の不条理を際立たせます。明日をも知れぬ不安のなかで、誰かを想い焦がれることの美しさと残酷さ。本作は、移ろいゆく時間のなかで燃え上がる魂の軌跡を、鮮烈な叙情性と共に現代の私たちへ突きつけてくるのです。