成瀬巳喜男監督がアイヌ民族への偏見という重厚な主題を、抑制の効いた筆致で描き出した至高の人間ドラマです。冷徹なリアリズムの中に人間の尊厳と希望が息づき、不条理に直面しながらも真っ直ぐに生きる姉弟の姿が魂を揺さぶります。沈黙や視線の交錯だけで内面を浮き彫りにする演出は、巨匠ならではの真骨頂と言えるでしょう。
森雅之の重厚な演技は父親の悲哀と矜持を体現し、山内賢らの無垢な生命力との対比が見事です。本作は単なる社会派作品を超え、人間が尊重されることの尊さを、北海道の厳しい自然と共に刻みつけました。時代を超えて色褪せないメッセージは、現代を生きる私たちの倫理観を鋭く問い直す力に満ちています。