古厩智之監督が描く、都会の片隅に漂う若者たちの焦燥と静謐な情熱。本作の真髄は、劇的な事件ではなく「夜」という区切りを待つだけの、停滞した時間のなかに宿るひりつくような手触りにあります。何者でもない時間の集積が、観る者の孤独にそっと寄り添い、忘れていた心の震えを呼び覚まします。
谷口朱里と藤川亜紀子が体現する、作為を排した生々しい佇まいは圧巻です。二人の間に流れる友情とも依存ともつかない危うい空気感が、映像に独自の詩情を吹き込んでいます。余白を活かした演出によって、誰かと繋がっていたいという切実な渇望が浮き彫りになり、閉塞感のなかで微かな光を探すような、唯一無二の鑑賞体験を約束してくれます。