本作の真髄は、股旅物特有の様式美に、人間の本能的な艶っぽさを大胆に融合させた演出の妙にあります。主演の里見功二が放つ、洒脱ながらもどこか哀愁を帯びた色気は、従来の剣客像とは一線を画す圧倒的な存在感を放っています。殺陣に見せる峻烈さと、情愛の場面で見せる柔和な表情の対比は、観る者の心を掴んで離さない魔力に満ちており、映像美の極致を体現しています。
早見恭子の艶然たる演技も、作品に深みと華やかさを添えています。単なる娯楽作の枠を超え、自由奔放に生きる者の孤独と歓喜を、洗練されたカメラワークで描き出している点が白眉です。移ろう風景と共に描かれる刹那的な恋と義理人情は、現代の我々が忘れかけている生への情熱を呼び覚まします。これぞ時代劇が到達した、成熟した大人のための珠玉のエンターテインメントと言えるでしょう。