この作品は巨匠・木下惠介の挫折を通じ、創作の根源にある愛を鮮烈に描きます。原恵一監督による映像美は、戦時下の閉塞感と信州の自然を鮮やかに対比させ、観る者の心に静かですが深い感動を呼び起こします。加瀬亮の体現する繊細な苦悩と、田中裕子の慈愛に満ちた佇まいは、言葉を超えた親子の絆をスクリーンに深く刻みつけています。
原作の持つ事実の重みを、映画は光と音によって情緒的に昇華させました。文字だけでは伝えきれないリヤカーの旅路の過酷さと、その途上で見出す色彩の豊かさは、映像メディアならではの圧倒的な表現です。一人の人間として母を想い、ただ美しさを愛でる心の尊さを描き抜いた、映像美の極致とも言える至高の人間ドラマです。