あらすじ
子持ちで離婚歴がある42歳、大黒シズオ(堤真一)。ある日、彼は「本当の自分を探す」と何も考えずに会社を辞めてしまう。だが、ゲームばかりの毎日を送り、同居する父親の志郎(石橋蓮司)から怒鳴られてばかり。そんな中、本屋で立ち読みをしていたシズオは漫画家になろうと決意し、志郎と娘の鈴子(橋本愛)に熱く夢を語る。しかし、出版社に原稿も持ち込むも不採用。さらに、生計を立てようとファストフード店でバイトするが、ミスを繰り返し、さらにはバイト仲間から店長というあだ名を付けられてしまう。
作品考察・見どころ
堤真一という名優が二枚目の看板を捨て、情けなくも愛おしい中年男を体現した点が最大の魅力です。夢を追う滑稽さを計算された脱力感で演じ切る姿は、観る者に「正しく立ち止まる勇気」を提示します。石橋蓮司との関係が醸し出す哀愁は映像ならではの実在感を放ち、不格好な生き方を全肯定する力強いメッセージを突きつけます。
原作のシュールな空気を、実写特有の肉体的な温度感へと昇華させた演出が見事です。漫画の「間」を堤真一が肉体化することで、物語に血の通ったリアリティが生まれました。原作の無常観を損なわず、実写でしか表現できない「不器用な愛」と「生の肯定」が、観る者の心に深く突き刺さる極上の人間讃歌に仕上がっています。