名優ヨアヒム・フックスベルガーが放つ、圧倒的な風格こそが本作の真髄です。画面に刻まれる彼の深い眼差しは、過ぎ去る歳月への郷愁と今を肯定する力強さを同時に体現し、観る者の魂に揺さぶりをかけます。ヨッヘン・ブッセとの息の合った掛け合いが、重厚なテーマの中に軽妙なリズムと人間味溢れる温かさを生み出しています。
人生を「飛行」になぞらえ、その浮遊感を詩的な映像美へと昇華させた演出は見事です。一瞬の煌めきを永遠に定着させようとするカメラワークが、人生の儚さと尊さを鮮烈に描き出しています。鑑賞後、自らの歩んできた道が光り輝いて見えるような、高潔な人間讃歌に胸が熱くなる一作です。