木下惠介監督の美学が炸裂した本作は、白黒画面に大胆な色を刷り込む色彩技法により、戦国絵巻を「動く浮世絵」へと昇華させています。この前衛的表現は単なる演出を超え、戦乱の残酷さと無常観を観客の網膜に焼き付け、時代劇の概念を根底から覆す衝撃を与えます。
高峰秀子と田村高廣ら名優たちが体現する、泥臭くも切実な生への執着は圧巻です。武田家滅亡の歴史の中で、戦の虚しさを鋭く告発するメッセージ性は、今なお胸を激しく揺さぶります。興亡を見守る笛吹川の流れが、命の尊さを無言で語りかけてくる、情熱に満ちた傑作です。