1930年という時代の息吹を感じさせる、洗練された会話劇の妙味が本作の最大の魅力です。主演のリチャード・ディックスが放つ、自信に満ち溢れながらも愛嬌のある存在感は、観客を瞬時に物語の熱狂へと引き込みます。愛は計算によって生み出せるのかという普遍的な問いを、軽快なテンポと優雅な演出で描き出す手腕は見事というほかありません。
意図的な誘惑と本心の葛藤が交錯する瞬間の演出は、現代のラブコメディにも通ずる鋭い人間観察に満ちています。理屈では説明できない「惹かれ合う心」が溢れ出す美しさは、白黒映像の陰影の中に鮮やかに刻まれています。恋の駆け引きが真実の愛へと昇華される奇跡を、至福の多幸感とともに体験できる逸品です。