本作の真髄は、官僚主義が招く滑稽な悲喜劇を、洗練されたブラックユーモアで描き切った点にあります。虚飾のために嘘を塗り重ねていく人間の性を、映像ならではのシュールな構図と絶妙なテンポ感で表現しており、観客を一気にその狂乱の渦へと引き込みます。
主演のヴィクトル・ミハイロフが見せる、追い詰められた人間の滑稽さと哀愁が同居する演技は圧巻です。極限状況下で発揮される民衆の底力は、単なるコメディの枠を超え、組織や社会の本質を鋭く問い直す強烈なメッセージを放っています。人間の逞しさと可笑しみが凝縮された、魂を揺さぶる傑作です。