あらすじ
シリーズ第1作平手造酒を演じた天知茂が再び浪人役を演じたシリーズ第13作。妙に殺気だった浪人とすれ違った座頭市は、その直後、浪人に斬られた男を発見。死に際に託された財布を男の実家に届けるため、市は一の宮を訪れるが、そこでは板鼻の権造一家が幅を利かせ、町の人々を苦しめていた。市はお蝶という心優しい女郎と知り合うが、彼女の亭主こそ、先に市と道ですれ違った浪人・黒部玄八郎だった。お蝶を身請けするのに必要な金を用立てるため、玄八郎は権造に自らの腕前を売り込み、市と対決する。
作品考察・見どころ
勝新太郎演じる座頭市の深淵なる孤独が、琵琶の音色と共に胸を打つ傑作です。本作の白眉は、天知茂が演じる虚無的な浪人との間に流れる、言葉を超えた魂の共鳴にあります。殺気と静寂が交差する殺陣はもはや芸術の域に達しており、斬り結ぶ二人の姿には、斬らねば生きられぬ男たちの哀しき宿命が鮮烈に刻まれています。
目が見えぬ市が心の眼で捉えるのは、欲望に塗れた人間の醜さと、それでも捨てきれぬ一筋の情愛です。勝新太郎の圧倒的な存在感と繊細な表情の変化が、単なるチャンバラ映画を超えた高潔な人間ドラマへと昇華させています。光と影を駆使した映像美の中で、市の奏でる調べが観る者の魂を激しく揺さぶる至高の一作です。