松本清張の短編を三村晴彦監督が映像化した本作は、湿度を孕んだ日本の土着的情念と、少年期の終わりを告げる残酷な通過儀礼を見事に描き出しています。特筆すべきは田中裕子の圧倒的な存在感です。彼女が演じる娼婦の危うい色気と底知れぬ哀しみは、単なる美しさを超え、観る者の視覚だけでなく嗅覚までも刺激するような生々しさを放っています。
原作の持つ冷徹な文体を、映画は豊かな官能性と情趣溢れる映像美で補完しました。天城の鬱蒼とした緑と降り注ぐ雨が、罪の意識と憧憬が入り混じる少年の心象風景を雄弁に物語っています。活字では想像に留まる情景が、渡瀬恒彦らの重厚な演技と相まって、逃れられない宿命の物語へと昇華された、映像表現ならではの白眉と言える傑作です。