本作の最大の魅力は、九十年代インディーズ映画特有の軽やかさと、瑞々しい感性が同居している点にあります。特にアレキシス・アークエットが体現する、繊細で揺れ動く恋心は圧巻です。滑稽なシチュエーションの中に潜む切実なまでの純情が、観客の心の奥底に眠る「忘れられない記憶」を鮮烈に呼び覚まします。
物語を貫くのは、言葉にできない想いと向き合う勇気という普遍的なテーマです。ロマンティック・コメディの枠組みを借りながらも、自らのアイデンティティと愛の狭間で葛藤する人々の姿を肯定的に描き出す演出が見事です。機知に富んだ対話と、不器用なほどに真っ直ぐな情熱が交差する瞬間、私たちは真実の愛の尊さを再確認させられるでしょう。