巨匠・五所平之助が戦後大阪の逞しくも切ない人間模様を、圧倒的な熱量で描き出した庶民劇の至宝です。宿という閉鎖的な空間に渦巻く金と情愛、そして葛藤を、冷徹なリアリズムと深い慈愛で包み込む演出が光ります。都会の片隅で泥臭くも懸命に生きる人々の息遣いが、独特の詩情を伴って観る者の魂を強く揺さぶります。
佐野周二や乙羽信子ら名優たちが、人生の悲哀と微かな希望を多層的に体現しており、その演技の厚みには脱帽するほかありません。金銭に翻弄されながらも失われない矜持。スクリーンから溢れ出す当時の大阪の湿り気と活気は、現代を生きる私たちに「人間として生きる本質とは何か」を静かに、しかし情熱的に問いかけてくるのです。