老境のバッハと若きプロイセン王という、二つの巨大な自我の激突を静謐かつ苛烈に描いた傑作です。バロックの巨匠と啓蒙主義を背負う王。ヴァディム・グロウナの威厳とユルゲン・フォーゲルの危うい狂気が火花を散らし、静寂に響く旋律が、互いの矜持を削り取るような緊迫感を生んでいます。
芸術が権力を超越する瞬間を捉えた映像美は、観る者に「真の自由」を問いかけます。天才の孤独と人間的な業が、重厚な宮廷劇として昇華されるカタルシス。名曲の誕生に秘められた情感を、これほど瑞々しく痛切に映像化した手腕に、音楽と人間への深い愛を感じずにはいられません。