本作の核心は、究極の父性と倫理の狭間で揺れ動く人間の業を、重厚なドラマとして描き切った点にあります。往年の大スター、鶴田浩二が見せる凄絶なまでの覚悟と哀愁は、血の繋がりがもたらす執着と無償の愛の危うさを鋭く突きつけ、観る者の心に深い爪痕を残します。
森下愛子の瑞々しくも危うい存在感と、野際陽子が放つ知的な緊張感が見事に化学反応を起こし、単なるサスペンスを超えた人間ドラマの極致を見せてくれます。静謐な演出の中に宿る爆発的な熱量は、映像作品だからこそ表現し得た家族という名の迷宮を鮮烈に浮かび上がらせており、今なお色褪せない名作です。