このドキュメンタリーは、重要無形文化財保持者である十三代今右衛門が到達した、究極の美学を静謐な映像で描き出しています。特筆すべきは「薄墨」の技法が持つ繊細な陰影の表現です。映像は陶磁器の表面に宿るわずかな光の揺らぎを逃さず、静止画では決して味わえない、時間と共に変化する伝統美の奥行きを見事に可視化しています。
作品の根底に流れるのは、伝統を背負いながらも己の表現を極めようとする孤高の精神性です。職人の手から生まれる一筋の線に込められた執念と、白坂道子の品格ある語りが重なり、観る者を陶芸の深淵へと誘います。完成された美の裏側にある、妥協なき探求心が胸を打つ、珠玉の映像体験となるでしょう。