ピエール・アルディティとニコラ・ブリアンソンという名優たちが織りなす、洗練された会話劇の応酬に魂が震えます。本作の真髄は、記憶という不確かな鏡を通して映し出される人間の滑稽さと愛おしさを浮き彫りにした点にあります。名優たちの眼差し一つひとつが、言葉以上に雄弁に人生の機微を語り、観客を深い思索へと誘うのです。
不完全な記憶を肯定する視点は、現代を生きる我々への力強い賛歌です。コメディという軽快な表現の中に、家族や自己のアイデンティティという重厚なテーマを鮮やかに潜ませる演出は実に見事。失われゆく時間への愛惜と、今を生きる喜びを情熱的に描き出した本作は、鑑賞後に自分の人生を愛おしく抱きしめたくなるような、極上の余韻をもたらしてくれます。