あらすじ
離婚して酒浸りの母と暮らす非行少年マルクの家に、ある日1本の電話が掛かってくる。その電話は、死んだと聞かされていた姉からのものだった。姉に会いたくなったマルクは、母の再婚相手が隠し持っていたピストルを持ち出し、薬局を襲って旅の資金を得る。その直後、顔見知りの刑事ジェラールに声を掛けられ悪巧みを疑われるが、とっさにピストルを刑事に向ける。マルクはそのまま刑事を脅して車を運転させ、姉の住む町へ向かう。ルイ・デリュック賞、フランス映画大賞、ベルリン国際映画祭・批評家連盟賞を受賞。
作品考察・見どころ
ジャック・ドワイヨン監督の眼差しが捉えるのは、社会の境界線で震える少年の剥き出しの鼓動です。本作の核心的な魅力は、計算された演出を超えた瞬間の純粋さにあります。新人ジェラール・トマシンの危うい存在感と、リシャール・アンコニナの包容力ある演技が火花を散らし、魂が共鳴し合う濃密なヒューマンドラマへと昇華させています。
不器用な孤独が他者という光に触れた時、物語は救済の輪郭を帯び始めます。拳銃という暴力の象徴を介しながらも、そこに描かれるのは父性への渇望と、人間が根源的に持つ繋がりへの希望です。荒削りながらも瑞々しい映像表現が、観る者の胸を焦らすほどに切なく、かつ強烈な生命の輝きを突きつけてくる傑作です。