あらすじ
映画監督の柾木は、親の遺産を食い潰しながら引きこもり続けて10年になる。極端に人との接触を嫌う柾木を気に掛ける大学時代からの友人・池内は、刺激を与えようと小劇場の舞台へと連れ出すが、柾木は居酒屋で酒をあおりながら厳しい論評を繰り返すばかりだった。しかし、そこに出演女優の芙蓉が現れると、その反応が一変する。柾木の演技論を熱心に聞く芙蓉に心を動かされ、創作意欲が湧き出してきた柾木は、彼女を主役にした脚本を書き始める。その想いの空回りが、次第に狂気を孕んで、誰も想像だにしない歪んだ愛の物語を奏ではじめる―。
作品考察・見どころ
本作の真骨頂は、理屈では説明しきれない人間の深淵に潜む「業」を、剥き出しの身体性と静謐な映像美で描き出した点にあります。愛という名の執着や、内側から自己を食い破るような孤独。それらを「蟲」という象徴的な言葉に託し、観る者の倫理観を静かに、かつ強烈に揺さぶり続けるその演出力には脱帽せざるを得ません。
平埜生成の放つ危うい色気と、佐藤里菜、木口健太が見せる泥臭くも切実な熱演は圧巻です。言葉にならない視線の交錯や、肌の質感までもが物語る生々しい映像表現が、単なるロマンスの枠を超えた「共依存の神話」へと作品を昇華させています。美しさと醜さが背中合わせになった、まさに映像でしか到達し得ない魂の震えを体感できる一作です。