本作が映し出すのは、音楽という名の「魂の記憶」そのものです。ジェームズ・ディンク・ロバーツが爪弾くバンジョーの音色は、洗練された現代音楽とは対極にある、剥き出しの生命力に満ちています。カメラが捉えるのは単なる演奏風景ではなく、歴史の荒波を越えてきた男の指先に宿る、ブルース以前の始原的な響き。その圧倒的なリアリティは、聴き手の心臓を直接震わせる凄みを放っています。
作為を排したドキュメンタリーだからこそ到達できた、親密な距離感が白眉です。音楽がいかに個人の生活や歴史と分かちがたく結びついているか、その本質を雄弁に物語っています。映像が記録した一音一音に込められた重みは、安易なノスタルジーを超え、真の芸術の根源を我々に突きつけます。